~野球の翻訳者は中馬庚氏~
ボール、バルーン、ブレット
本コラムはこのところ社会的に大きなインパクトをもつ様々な新たな世相を中心としてカタカナ語の解説を試みてきましたが、考えてみると、カタカナ語は、世相にかかわりなくスポーツ、エンタメ、技術、さらには広く文化・社会全般で長い間使われ、よく知られています。そこで、本コラムは今後、広く社会全般で使われているカタカナ語を分野ごとに取り上げてみたいと思います。
まずはファンが一番多いスポーツからいって見ましよう。日本で一番、愛好されているスポーツは言うまでもなく、ベースボール、即ち野球ですね。今回は初回ともなりますので、この翻訳者をウンチクとしてご紹介してみましよう。野球と訳したのは、明治の文豪、正岡子規との説もありますが、正しくは、第一高等学校(一高)の野球部員、中馬庚(ちゅうまかのえ)氏です。当初は、ボール・インザ・フィールドから「野球」と訳したようです。同氏はショートストップを「遊撃手」と訳すなど多くの訳語があるところから、特別表彰者として「野球の殿堂博物館」に入っています。ちなみに、正岡子規にも「打者」、「走者」、「四球」など多くの訳語があり、同じく殿堂博物館入りしています。
蘊蓄(ウンチク)だけで、英語がなくては看板が泣きます。ややむり筋ですが、ベースとボールを取り上げてみましょう。ベース(base)は「塁」ですが、「土台・基礎・基地」など多くの意味がありますね。さらにベーシック(basic)となれば「基礎の」、ベースメント(basement)となれば「地下室」、ベーシス(basis)となれば「基礎、根拠」となります。
つぎはボール(ball)です。「球」といたって簡単ですが、「小さい」の意の「レット」をつけるとブレット(bullet・弾丸、小銃の球)、バァロット(ballot・投票)となります。後者は秘密投票をする際に用いられた小さな球が原義なのです。さらに、「大きい」の意の「ルーン」をつけるとバルーン(balloon)となります。
アドバルーンは大方がご案内でしょう。アドバータイズメントバルーンの略で、広告気球なのです。まあ、チョットしたものでしよう。